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日本シティズンシップ教育学会 設立趣意書

 日本の社会に,参加型民主主義社会を支える市民を育てる教育としてのシティズンシップ教育が徐々に浸透しつつあります。日本の各地では,「シティズンシップ」あるいは「シティズンシップ教育」の名を冠した多くの研究がさまざまな場所や機会に行われるようになり,研究者や実践者の期待を集めています。

 しかし,それらの研究が,それぞれの場所や機会に一定の賛同や評価を得ているとしても,学会や組織の枠を超えた相互のつながりや広がりはまだ弱く,シティズンシップ教育の持っている潜在的な可能性 が十分に引き出せているとは言えません。むしろ状況は混沌の度を深めつつあり,このままでは,研究者や実践者の期待に応えられぬ間に,何百もあるといわれる〇〇教育の一つとして埋没してしまいかねません。

 多義的で多様な意味や解釈を持っているシティズンシップ(教育)であるがゆえにこそ,学際的,総合的にシティズンシップ教育についての知見を俯瞰し,集約することの必要性が増しています。

 シティズンシップ教育の研究には,その多義性や多様性に鑑みて,多角的・多面的な分析が必要です。例えば,シティズンシップ教育の目的,方法,内容, 役割,あるいは今日的な教育課題との関係など,さまざまな角度や視点から研究を進めることで,シティズンシップ教育の在り方を,総合的に分析・考察し,実践に資する知見を得ることができます。

 そのためには,哲学,教育学,心理学,政治学,経済学,社会学,宗教学等の原理的な研究,社会教育,生涯教育,ボランティア教育,学校教育,国際理解教育, グローバル教育, 比較教育, 人権教育,ジェンダー教育,環境教育等の教育的研究 や, 学校教育の中での 教科・領域に関する実践的研究などから,多様な研究者,実践者が集って学際的に研究を進め,それ ぞれが得た知見を持ち寄り共有することが必要です。そうすることで,研究のレベル,ひいては 研究を生かした 実践のレベルを一歩ずつ引き上げていくことができます。

 少子高齢化が進む日本社会にあって,18 歳選挙権導入にともなっての主権者教育をどう展開するか,グローバル化が進む国際社会にあって,生涯にわたる個々人の生き方の模索(キャリア形成)と関わらせながら,グローバルなシティズンシップをどのように育成するか,地球上の誰一人として取り残さないことを誓う国際目標としての「持続可能な開発目標」( SDGs )をいかに実現するかな ど,シティズンシップ教育をめぐる課題が山積しています。そのような今であるからこそ,多くの関係者が集い,議論し語ることのできる研究 と実践 のプラットフォームが必要です。

 以上の理由から,私たちは,ここに日本シティズンシップ教育学会を設立することを宣言します。

2019年12月15日

設立発起人一同
荒井翔平,池田幸也,石森広美,市川享子,市瀬智紀,岩本泰,大久保正弘,大津尚志,大森秀子,奥野浩之,小原淳一,桐谷正信,窪田勉,小林 亮,今陽童,坂井清隆 佐藤真久,佐藤 学,柴崎直人,清水弘美,杉浦真理,鈴木崇弘,辰野まどか,田中曜次,谷口和也,玉木博章,長沼豊,成田喜一郎,蓮見二郎,林 大介,藤原孝章,松倉紗野香,水山光春,森茂岳雄,由井一成,吉村功太郎,若槻 健,渡部裕司