「責任ある創造的な社会の一員は、どのような経験、学び、きっかけで育つのか」を議論すべき問としてユース・エンパワーメントをテーマにした研究集会が5月14日に行われました。今回は登壇者に両角達平氏(日本福祉大学社会福祉学部専任講師)、能條桃子氏(NO YOUTH NO JAPAN 代表)、立命館宇治高等学校社会科サークルメンバーを招聘し、両角氏による基調講演、パネルディスカッション、ブレイクアウトルームを用いて登壇者とのダイアログという形式でした。基調講演とパネルディスカッションの要約を下記にご報告いたします。
基調講演内容
若者の政治参加について
スウェーデンのPISAスコアは高くはないが、若者の政治参加は活発。この背景にあるのは若者が参加する場が多様にあるのかもしれません。地元ベースのNPO、学生による政治・文化団体であるYouth Councilや地元のコミュニティや学校主体のもの等、スウェーデンには若者が参加できる団体(地元ベースのNPOなど)が数多くあり、活動の分野もさまざまです。趣味的なもの、宗教、文化、学生団体や、更に成人も参加可能なStudyサークル団体も含みます。
学校における民主主義
民主主義を育む学校環境をご紹介いただきました。生徒の意見を反映することができるStudent council(例:給食への希望、意見)、より小さな単位ではClass councilがあり、生徒たちは授業についての要望を出すことができます。他にもStudent union(学生組合)や学校で行われる選挙等もあり、デモクラシーが身近に感じられる環境が整っている様子です。この背景には学校は価値中立的とはなり得ないが、民主主義の価値観を教える義務があると理解されていることがあるのかもしれません。
パネルディスカッション
杉浦真理先生(立命館宇治高校)をモデレーターに行われたパネルディスカッションではユースエンパワーメントについて登壇者に経験を語っていただき、以下の課題を共有することができました。
- 何か違和感を感じることは何かを軸に動くことの大切さ
- 変化を起こそうとする精神やそれを実行していく積極性は日本においてもユースエンパワーメントや政治参加のために重要。
- スウェーデンにおいて余暇を大切にする文化や、自分にとって興味のある活動(学生会など)に関わる積極さは消費者主義に吞まれることなく福祉国家を貫いたカギでもあり、政治に参加する意識を育むことができるのかもしれません。
- 「意識高い系」ではなく政治はもっと身近で自分の生活を良くするためのもの
- 一つの課題としてフィルターバブルを打破する必要性があげられました。既にNo youth No Japanといった活動に興味を持つ人は限られた’声を上げる’ことができる人たち。もっと身近に感じてもらうことは課題ではないでしょうか。
- 何が政治参加のモチベーションになりうるのか
- 学校での学びを社会課題に関連付けることも重要性、社会課題を身近なものとしてとらえていること、団結してそういった課題に取り組むことが大切なのではないかといった点が重要なのではという意見が出ました。
- モチベーションの他にも、日本において政治参加や声を上げることへの課題としては政治について話すことがタブーとされがちであることがあげられました。日本社会特有といえるかもしれない周囲の目を気にしなければならない環境というのも課題の一つといえるでしょう。